自国の科学技術を誇りとする姿勢は「テクノ・ナショナリズム」と呼ばれます。歴史社会学者の塚原真梨佳さんは、USスチール買収問題での米国の強い反発の背景に、テクノ・ナショナリズムの存在があると指摘します。また、こうした態度は、戦後日本の言説空間にも存在していたとも。その象徴が「戦艦大和」でした。塚原さんによる寄稿です。
◇
USスチール問題、反発の背景には
2023年12月、日本製鉄は米鉄鋼企業のUSスチール買収を発表した。買収計画に対し、米政府、議会そして国民は反発。政府は買収阻止に動き現在も解決を見せていない。反対理由として米政府は安全保障やサプライチェーンの信頼性を挙げたが、いささか強硬にも見えるその反応は、果たして本当に軍事的・経済的合理性にのみ基づくものなのだろうか。買収阻止に動いた二人の大統領の発言からは、合理ではない米国民の心情が垣間見える。
「USスチールは1世紀以上、象徴的な米鉄鋼企業であり、国内で所有され、運営される米企業であり続けるべきだ」(バイデン氏)。「(USスチールは)長い間世界一の会社だった。だから日本に行くのを見たくない」(トランプ氏)。
USスチールはその名の通り米国を象徴する企業であり、鉄鋼業は工業大国アメリカの花形産業である。そんな企業が外国に買われる事態は、米国民のプライドを少なからず傷つけるものだったのではないか。
米政府が見せたような、自国…